大きな前進とともに課題も残った第4次厚木基地騒音訴訟東京高裁判決

1 自衛隊機の夜間早朝飛行差止めを命じる
平成27年7月30日、東京高裁(齋藤隆裁判長)は、第4次厚木基地騒音訴訟の判決を言渡した。東京高裁は、国に対し、将来分を含む損害賠償金の支払いを命じるとともに、一審の横浜地裁に引き続き、行政訴訟において自衛隊機の夜間早朝飛行差止も命じた。横浜合同法律事務所から、関守麻紀子弁護士と海渡双葉弁護士が住民側弁護団に所属している。
2 画期的な将来の損害賠償命令
東京高裁は、口頭弁論終結日の翌日である平成27年5月15日から、平成28年12月31日までの約1年7か月余りの将来分の損害賠償金の支払いも命じた。平成28年12月31日という将来の損害賠償の終期は、日米再編ロードマップに基づく米空母艦載機の厚木基地から岩国基地への移駐時期をふまえてのものであった。
横田基地に関しては、平成17年11月30日、東京高裁(江見弘武裁判長)が、口頭弁論終結日の翌日から判決言渡日までの8か月ないし1年の将来分の損害賠償金を支払いを命じていた。しかし、この東京高裁判決は、平成19年5月29日、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)が、大阪国際空港訴訟昭和56年12月16日大法廷判決に反するとして破棄した(ただし、田原睦夫裁判官、那須弘平裁判官の反対意見が付されるとともに、近い将来の然るべき事案における大阪国際空港訴訟判決の再検討を拒否するものではないとする藤田宙靖裁判官の補足意見も付された)。
平成19年最高裁判決の後に出された今回の東京高裁判決は、将来の損害賠償について大きな前進であったと言える。将来の損害賠償についての最高裁の判断が注目される。
3 米軍機の飛行差止めを
東京高裁は、米軍機の飛行差止めについては、民事訴訟においても、行政訴訟においても認めなかった。民事訴訟においては、支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであり、主張自体失当として棄却し、行政訴訟においては、米軍機差止請求にかかる訴えは、存在しない行政処分の差止めを求めるものであり、不適法として却下した。しかし、東京高裁は、厚木基地に離着陸する回数及び運航機数は米軍機によるものが多く、厚木基地周辺の航空機騒音のうちの多くを米軍機の発するものが占めており、特に著しく大きな騒音を発する大型ジェット機は全て米軍機であることが認められるとまで認定しているのであるから、米軍機の飛行差止めを認めるべきである。
東京高裁が米軍機の飛行差止を認めなかったことについて、沖縄2紙は、社説で以下のとおり厳しく批判している。
<沖縄タイムス>「米軍機の運用について司法も政府も規制することが出来ない状態で、果たして主権国家といえるのか。」「違法な水準にある騒音被害を放置したままでは、憲法で保障された基本的人権を守ることはできない。」 
<琉球新報>「米軍機飛行差し止めを視野に入れた判断を下すことは主権国家の司法のあるべき姿である。「静かな夜」を求める基地周辺住民の切実な訴えを「第三者行為論」で退ける司法の思考停止をこれ以上繰り返すことは許されない。」
住民が側が上告・上告受理を申立てたため、米軍機の飛行差止めについても最高裁で審理されることとなった。米軍機の飛行差止めについての最高裁の判断も注目される。
(中村晋輔)
.28 2015 基地問題 comment0 trackback0

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