「これが守秘義務違反?」 目に余る裁判所の裁判員報道介入

 新聞報道で感じていましたが、裁判員経験者の記者会見に対する裁判所の介入には、目に余るものがあります。私が所属している人権NGOで、今年9月までに全国の地方裁判所が作成した内部報告文書の開示を受けて、その思いをさらに強くしました。
 裁判員裁判の事件で判決が言い渡された後、裁判員と補充裁判員の経験者のうち、希望者が記者会見に臨み「感想」を話しています。ところが裁判所は、職員を記者会見に立ち会わせさせ、守秘義務違反の可能性のあるやり取りがあれば、その場で答えるのをやめさせたり、記者に質問を変えさせたり、やり取り自体がなかったことにさせたりしています。
 裁判員経験者には、例えば性犯罪被害者の住所・名前など「職務上知り得た秘密」ばかりでなく、どのような議論を経て判決に至ったのか「評議」の内容を話すことについても、刑罰付きの守秘義務が課されます。この義務は死ぬまで負い続けます。
 「感想」や「意見」を話すことは市民として当然の表現行為であって、自由なはずです。問題は「評議の秘密」との境界が極めてあいまいで、取り締まろうとする側の恣意的な判断に流れがちな点にあります。
 裁判員経験者に違反をさせてはならないと、裁判所は、職員が立ち会うことを絶対条件に記者会見の便宜を図っています。そこで、滑稽な「指導」が繰り広げられています。
 最高裁判所が、全国の地方裁判所から集めさせた指導事例の報告書には、本当にこんな発言が守秘義務違反なのかと突っ込みを入れたくなるほど、ナンセンスな裁判所の感覚がにじみ出ています。
 「判決に納得していますか」という記者の質問に、総務課長が「裁判員に判決の当否を問うことは、裁判の公正に対する信頼を著しく害する恐れがある」と指摘したら、記者は質問をやめた、とするさいたま地裁の報告。「真の原因は被告人に友達がいなかったことにある」との裁判員経験者の発言を報道した記者に、この発言は守秘義務違反であると警告したとする青森地裁の報告。「裁判官だけなら××(伏せ字)になった可能性があり、自分たちが参加した意義があった」と述べた裁判員経験者の発言について、記者会見の後記者を集めて「できれば記事にするのは遠慮願いたい」とくぎを刺したが、記事が出たと問題提起する静岡地裁の報告。
 判決に否定的な意見を述べた裁判員経験者の言葉には「レッドカード」を乱発し、「判決が妥当である」との裁判員経験者の発言について「話の流れの中で自分の感想という形でされた発言なので特に守秘義務違反とは考えていない」(名古屋地裁)とするなど、判決に肯定的な感想は素通しするという裁判所の基本姿勢が透けて見えます。
 賛否両論が対立する中でスタートした裁判員裁判の問題点を適切に判断するためには、私は、裁判員経験者一人ひとりの率直な感想や意見が明らかにされることが欠かせないと考えています。それを「検閲」するかのような裁判所の姿勢には疑問を抑えることができません。(北神英典)
.18 2010 刑事事件 comment0 trackback0

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