国会議員定数削減は改憲への第一歩 見過ごせない首相発言

 平成23年7月30日、菅直人総理大臣は記者会見を行いました。記者会見の中で菅直人総理大臣は、なぜかマスコミが大きく取り上げない、しかしたいへんに大きな問題を述べました。それは、国会議員の定数削減です。「・・・国会議員自身が身を切ることも必要だと思います。衆議院の定数を80、参議院の定数を40削減するというこの方針に沿って、8月中に党内の意見をとりまとめて欲しい、そして12月までには与野党で合意を図ってもらいたい。・・・」国家財政の無駄をなくすという文脈で述べられた言葉ですが、これは改憲への第一歩となる危険を含んでいます。
 国会議員は、いうまでもなく国民の代表です。そして、議会での議論を通じ政策を形成する重要な役割を担っています。さらに、三権分立の下、国会を構成する議院には国政調査権(国家の権力行使などが適切か調べる機能)が与えられ、ほかにも国会は内閣総理大臣の指名権等をもって行政権をチェックする重要な機能を持っています。こうしたチェック機能は、十分な議員の数なくして行い得ません。
 ところが民主党は、衆議院の定数を80減らし、しかもその対象は比例代表選出議員の数だというのです。比例区選出議員の数が削減されてしまうと、小選挙区制で選出される議員が圧倒的に多数となります。言い尽くされてきましたが、小選挙区制の問題点は、選択の多様性が失われてしまうことです。小選挙区制では1人しか選挙区から選出されないため、多数派の声しか議会に届かなくなってしまうのです。
 日本国憲法は基本的人権を尊重し、多数派による支配という単純構造を否定し、少数者の自由や人権にも配慮した民主主義を大切にしています。しかし、小選挙区選出議員が圧倒的多数を占めるようになると、少数者の声が議会に届かなくなり、議会多数派(決して国民の多数派とも限らない・・・)が、やりたい放題にしてしまう危険があります。国会の多数派工作で少数派を排除するような選挙制度を構築するなら、それは民主主義の自殺ともいえる行為です。
 もし、議員定数が削減された場合、最悪のシナリオは以下のとおりです。①削減した定数で行われた選挙で多くの得票をした議員が選出される②多くの得票を得た議員で構成された国会において改憲手続法をいじくり改憲を容易にする下準備をする③憲法の改正条項だけ改正して憲法上も改憲をしやすいものにする④本腰をいれて憲法の中身の改憲を行う⑤戦争のできる国、国の利益のために個人の人権を犠牲にする国にする・・・。
 さあ、みなさん、たいへんです。「あんな議員ならいらない」なんて言っている場合ではありません。憲法を改正されてしまったら、軍隊を持つことも、海外に派兵することも、軍事条約を結ぶことも、防ぎようがありません。労働者の権利が憲法から消えてしまったら、私達法律家はお手上げです。えん罪を防ぐ被疑者被告人の権利も、こどもの権利も、差別をなくす社会も、憲法から消えてしまったら、お手上げになってしまいます。
定数削減に隠された改憲への狙いを、力を合わせて、阻止しましょう。(浅川壽一)
.20 2011 政治 comment0 trackback0
 HOME