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最低賃金裁判提訴~時給1000円以上の最低賃金を実現するために~

 労働者の賃金は、最低賃金法に基づいて、各都道府県ごとに最低賃金が定められています。平成22年の時点で、神奈川県の最低賃金は818円です。
 この最低賃金について、私たちは6月30日、神奈川労働局長に対し、神奈川県の最低賃金を1000円以上とする決定を行うよう命ずる判決を求め、横浜地方裁判所に提訴しました。
 平成19年の最低賃金法改正により新たに9条3項が設けられ、各都道府県ごとの地域別最低賃金を決定するにあたり、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することが定められました。この規定の趣旨は、最低賃金が生活保護を下回らないよう配慮することであると国は繰り返し説明しています。
 そして、厚生労働省によれば、神奈川県は最低賃金が生活保護を下回る逆転状態にある都道府県の一つとされ、改正法が施行された平成20年以降、逆転状態の解消に向けて、昨年までの3年間で最低賃金は合計82円引き上げられました。また、厚生労働省によれば、神奈川県の最低賃金が836円に引き上げられれば、生活保護との逆転状態は解消するとされています。
 ところが、厚生労働省が発表している数字には、多くのゴマカシが隠されているのです。
 最低賃金は時給によって定められているのに対し、生活保護は月額で定められています。そのため、最低賃金と生活保護を比較するため、一定の計算が行われています。しかし、この計算の中に、5点ものゴマカシがあるのです。
 1点目は、最低賃金と生活保護を比較するにあたり、時給で定められる最低賃金に、毎月の労働時間として173.8時間を掛けている点です。173.8時間を掛ける根拠は、この数字が労働基準法上想定される最長の所定内労働時間だからです。しかし、国が行っている毎月勤労統計調査を見ても、一般労働者の所定内労働時間は、過去数年155時間前後で推移しています。そのため、173.8時間を掛けることは、実態よりも、所定内労働時間を大幅に水増しするものです。
 2点目は、公租公課の負担を除去して最低賃金と生活保護とを比較するため、0.859という係数を掛けている点です。この係数は、沖縄県の公租公課の負担率を根拠として定められています。しかし、沖縄県は全国で最も最低賃金の額が低いため、公租公課の負担率も全国で最も低くなっています。そのため、神奈川県で働く労働者の公租公課の負担率は、中央最低賃金審議会が計算に用いる沖縄県の公租公課の負担率よりも、もっと高くなっています。それにもかかわらず、沖縄県の数字を神奈川県でも用いることは、神奈川県の労働者の公租公課の負担を過小評価するものです。
 3点目は、勤労経費が全く考慮されていない点です。最低賃金で働いている人も、労働によって収入を得るには、労働に伴う一定の経費が必要となります。そこで、勤労経費を差し引いた金額と生活保護とを比較しなければ、正しい比較となりません。現に、労働によって収入を得ながら生活保護を受給する場合にも、勤労経費は考慮されています。ところが、中央最低賃金審議会が最低賃金と生活保護を比較するにおいて、勤労経費の点は全く考慮されていないのです。
 4点目は、級地間の調整です。最低賃金は、各都道府県ごとに一律の金額で定められています。他方、生活保護は、各都道府県を複数の級地に分け、生活保護の支給額を決めています。そこで、中央最低賃金審議会の計算では、人口加重平均によって生活保護の平均額を求め、最低賃金と比較しています。しかし、生活保護の平均額を上回っていても、平均額以上の生活保護の支給を受けている人もいるのですから、逆転状態を解消したことにはなりません。
 5点目は、住宅扶助費です。中央最低賃金審議会の計算では、生活保護の住宅扶助費について、実績値を用いて最低賃金との比較を行っています。しかし、この点も、実績値を上回っていても、実績値以上の住宅扶助費の支給を受けている人もいるのですから、逆転状態を解消したことにはなりません。
 このように、厚生労働省が公表している数字には、計算にあたって5つの大きなゴマカシがあります。そのため、神奈川県の最低賃金が836円に上がっても、生活保護を下回る逆転状態は解消しません。神奈川労連の試算では、逆転状態を解消するには、1471円の時給が必要とされています。
 そこで、地域の賃金水準や事業者の支払能力といった最低賃金決定に関する他の要素、さらには行政の裁量を考慮するとしても、最低賃金は1000円以上でなければならないとして訴訟を提起したのです。
 現在、神奈川県内で求人募集などを見ると、時給800円台の仕事がたくさんあります。そのような中、生活保護との逆転状態の解消を定めた最低賃金法9条3項を法的根拠として、最低賃金を1000円以上に引き上げることを求めた時、むしろ、生活保護が高すぎる、生活保護を引き下げろという声が強まるのではないかという危惧を指摘されることもあります。
 しかし、時給1000円では、毎月155時間働いても月収で15万5000円、年収で186万円にしかなりません。ここから、公租公課や勤労経費を除けば、手取額はさらに少なくなります。このように具体的な数字で考えた場合、時給1000円は決して高くない、労働者が人間らしく生活するために、まさに最低限必要な金額なのです。
 労働者が勤労収入だけで人間らしい暮らしを営むことができる権利、人間らしく生き働く権利を実現していくため、最低賃金はどれだけ低くても1000円以上でなくてはならない、この点も訴訟では訴えていかなくてはなりません。
 この訴訟が、1000円以上の最低賃金を実現する一つの契機となるよう、全力を尽くしてまいります。(田渕大輔)
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.24 2011 労働事件 comment0 trackback0
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